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初めてパニックになった

 私は体を鍛えようと週に2回ほどトレーニングジムに通っていた。 ウォーキングとジョギングそれに2、30Kgのウェイトトレーニングで、終わる頃には少し汗ばむ程度だった。 それは昔、登山やボクシングをやっていた頃の2、3割、それよりか少ない運動量だった。

 ある日、いつものようにジムへ行き、トレーニングを始めようとストレッチをしていた時だった。

 突然、心臓がドッドッドッドドドドドド

まるで鼓動が早鐘のように打ちはじめ、全身の血がスーっと一瞬のうちに引いていったかのようだった。
 意識はもうろうとし震えが体を襲い呼吸がしづらくなり訳が分からなくなっていた。

 私の身体をパニックが襲った!

 唐突に 「死」 が脳裏を横切り、恐怖が全身を包んだ。

 「このままでは本当に死んでしまう」

 そう思った私はふらふらする身体を何とか引きずり、パニックの恐怖と戦いながらジムの受付に助けを求めた。
 私の表情からただ事ではないと思ったのか、顔を見るや否や救急車を呼んでくれたのだった。

 やがて到着した救急車の担架に載せられ車に乗り込むと

 「助かるのか」

と安心したのか少しずつ気持ちが落ち着いてきた。 そして、病院に着いた頃には、症状はだいぶ良くなっていて呼吸が出来るようになっていた。

 その後、医者の診察を受けることとなったのだが

 「どうしましたか」

と医者に聞かれたのだが、なにしろその症状は突然私を襲ったわけで、もちろん過去にもこのような経験は無かったので、何て説明していいのか分からなかった。 いろいろと検査を受けたのだが異常は無かったのだ。 
 「また発作が起こったら救急車を呼びなさい」

とその医者は言った。 冗談じゃない、助けてくれ、何とかしてくれ。

 私は病状も、その原因も分からないまま家に帰った。


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またパニックに襲われる

 何日か過ぎたある日、私が車を運転していた時だった。 その日は特に暑くも無く、寒くも無く穏やかだった。 私はしばらく車を走らせているとそのうち、夕方のラッシュで私の車は渋滞に巻き込まれてしまった。

 と、突然、またあの感じが私の体を襲ったのだ、発作だ!
 全身から冷や汗が吹き出て、のどがカラカラに渇いていった。 それにともない、またあの 「死」 の恐怖が私の中によみがえって来たのだ。
 まだ家からさほど離れていない、と思った私は必死にそのパニックと戦いながら、車をユーターンさせなんとか家までたどり着くことが出来たのだった。

 だが、家に着いてからも恐怖は消えなかったのだ。 それどころかその日以来、毎日、毎晩、決まって夜中の2時ごろその恐怖を感じ眼が覚めるのだった。 そして、朝まで眼が冴えて眠れないのである。 そのおかげで毎日が寝不足で、一日中頭がボーっとして身体もだるく何も手につかないような状態だった。    

 仕方が無いので病院へ行き、安定剤を処方してもらって服用していた。 それはなんとなくいいように感じられた。 だが、発作が止むことは無かったのだった。 
 発作が起きてしまったら、その症状を薬で抑えることができなかった。 あの 「死」 の恐怖は消えることが無かったのだった。


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いったい私の身体はどうなってしまったのだろうか

 しだいにこのパニックの症状とこの恐怖感は何が原因なのか、どうしたらいいのか、という事を私は考えるようになった。
 どうもそれは私のストレスがたまっている時に発病するようだ、という事がわかったのだった。 これは一つの発見だ。
 ある日、書店を何軒か回って本を見ているうちに 「トラウマ」 について書かれているものに目がいった。 その本には 「トラウマとはとても対応できないような心のキズとなる体験」 とあった。
 私にもその様なものがあるのか、それがこの症状と関係しているのか、と考えてみた。
 そして、私の過去にトラウマになるような経験があるのか思い出してみた。
 だが、その様なものは見当も付かないし、思い当たらない。 もしかしたら、他に思い出したくない経験が私の記憶の中にあるのではないか。 意識の記憶の中ではなくて、潜在意識の中に記憶されているのではないか、と私は考えてみた。
 そこであれこれ試した結果、催眠を使って潜在意識の中にある記憶を探ってみることになった。 ここでは自己催眠というもであった。
 そして慎重に何度か行っていると、あったのだ、私の潜在意識の中にトラウマが。 強烈な体験が私の中に記憶されていたのだ。
 私によみがえって来たその記憶はとてもじゃない、思い出したくも無いものだった。
 その出来事はすでに10年もの月日が経っていたのだが、同時に当時の痛み、臭い、とかの感覚がそん色なく鮮明によみがえって来た。 嫌な出来事だった。 本当に二度と思い出したくないものだった。    

 だが不思議な事に、それ以来あの病状が私を襲うことは無かった。 確かに不安はあった、だが絶対にあの状態から抜け出せていると信じて行動しているのだ。 

 私は今、誰もがこの病気から必ず脱出できると確信しています。 そして、同じ苦しみを体験している人たちに教え伝えたいと思っています。


私の場合、自己催眠によって何を思い出したのか

<パニックになる10年ほど前のことだったと思う、仕事で鳥取へ行った時のことだ。

<その夜、なかなか寝付けないので近くでアルコールを買ってきて一人で飲んでいた。 普段はまったく飲めないくせにだ。 冷たくて飲みやすかったので二合ほど飲んでしまったと思う。

<しばらくすると顔がだんだん熱くなってきて、胸も苦しくなり吐き気がしてあわててトイレに駆け込んだ。

<とにかく吐こう

<口に指を突っ込んで無理やりに吐こうとした。 だがなかなか吐くことも出来ずにますます気分が悪くなった。 もう自分ではどうにもならないので連れに救急車を頼んだ。

<「急性アルコール中毒」です。

<医者にそう言われ治療を受けた。

その時はとにかく苦しかった…その気分が催眠中に出てきたのだ、口からは何も出ないが吐き気は何度も催眠中に出てきた、止めようとしても出てきた。

「あの時の気分だ!」

意識ではわかっていたが自然に止まるまで続いた。 時間にして2、3分のことだ。

思い出したくない気分が出た反面、こんな気分が潜在意識の中にトラウマとして残っていたのかと思うとぞっとした。

その後2、3回自己催眠をしてその最中に吐き気がしたが大した事は無かった。 他に何か残っていないか試したが他には何も出てこなかった。 そんな頃、自分でもこの方法に確信が持て、それと同時にストレスもさることながらトラウマの恐さも十分理解できた。

※ 私の場合は一つのトラウマによって引き起こされていましたが、人によっては複数の場合もあります。 幼い頃の経験もありますが、催眠を使いそれを思い出すことによって「苦い思い出」となり苦から脱出できます。 それは本人が納得できることで、記憶が無くなることでもないし恐がることもありません。 ストレスの恐さと人の不思議さを実感できることだと思います。 この病気にかかる人は脳の異常とか変人とかでなく、むしろストレスの発散が下手で、性格的が几帳面で人の良さにも通じると思っています。 また自分で何とかできるので、自分で脱出するのが良いと思います。

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